この記事はこんな人におすすめ

パルクールを始めて間もない
自主練習に活かしたい
1人で練習していて、怪我や事故に不安がある

1.パルクールの基本

これはどんな動作・技術があるかというテーマではありません。パルクールに限らず重要な、本当に基本的な取り組み方・心構えみたいなものです。前回の記事で少し触れたのですが、今回は大きく4つにわけて説明します。その4つとは「ゆっくりな動きから徐々に速く」「近いところから徐々に遠いところへ」「低いところから徐々に高いところへ」「単純な動作から徐々に複雑な動作へ」です。成長・進歩の基本的な考え方ですが、「やりたいこと」に意識を引っ張られすぎて忘れがちな部分です。今回はこの中から「ゆっくりな動きから徐々に速く」について説明したいと思います。

2.ゆっくりな動きから徐々に速く

2-1.ゆっくり動くことのメリット

これについては、教室に参加された方は耳にタコができるほど聞いていると思います。ゆっくりと動くことで、ひとつひとつの動きを確かめつつ、重心の移動やどう筋力を使っているかを感じやすくなります。また、速度が低いと、足を滑らせたり体の位置が悪かった時に、衝突までの時間が伸びるのでリカバリーをとりやすく、もし衝突してもダメージは低くなります。自分の能力がどの程度か?ということと向き合いつつ実践できるので、安全に挑戦ができる技術や能力が身につきます。

少し分かりやすくするためにこの質問に、実際に自分がやると想像して答えてみてください。
1.「レールの上でバランスを保ったまま走れますか?」
2.「レールの上を歩くのと走るのとではどちらがリスクが高いでしょうか?」
多くの方の答えは、1.が「いいえ」、2.が「走る」となると思います。「歩く・走る」どちらにしてもバランス感覚を軸とした体のコントロールが必要になります。

2-2.例:身体能力と技術

例えば、ゆっくり歩くのであれば、足が地面についてから離れるまで数秒~数十秒かけることもできます。この間、じっくりと小さな力でバランスを修正することができるので、触れて、感じて、考えながら次の一歩に繋げることができます。
しかし、走るとなるとコンマ数秒で足を離さないといけません。着地の瞬間にバランスが取れていないと姿勢が崩れます。バランスが取れていても重心移動でブレるとここでも崩れます。レールを蹴るタイミングでは進行方向に対して真っすぐ精確に体を押し出さないと、次の一歩が崩れます。加えて、走るってかなり大出力の動作なんですけど、出力を上げるほどコントロールは難しくなりがちで、それに伴った筋力が必要になります。走る時って、これを1秒間に2回以上のペースで、かつ安定してできないといけません。
ちなみに平らな地面でもこの精度でできないと、姿勢が崩れることによりロスが出てスピードが下がるので、ただ走るって意外と難しいんです。

2-3.例:リスクと精神力

リスクの面でのポイントは、歩くときに比べて走る時の方が地面につま先が落ちるスピードが速くなるんですが、これがそのまま滑落のスピードになると思ってください。加えて、脚のつっかえがなくなるので、傾いている方向に体が大きく急激に倒れることになります。速いってそれだけでリスクが高いんです。というところは、簡単に想像できると思いますが、その上で、

「走れますか?」「走ろうと思えますか?」「歩くときと同じように心と体をコントロールできますか?」

これが大事なところです。リスクがあると分かると足がすくんだり、全身が硬直したりしがちです。心がその状況に適応できていないと、身体能力や技術が高くても、体が上手く動いてくれません。これが分からないまま飛び出してしまうと、動作の途中で恐怖が沸き上がってきます。そして、精確なコントロールができなくなり、堪えようにも力が上手く使えなくなり、体が硬直しているからリカバリーがうまく行えず、怪我に繋がってしまいます。普段は勉強が得意で小テストは強いんだけど期末や入試や資格試験になるとパニクって点が取れない人とかいますよね。それと同じことです。

3.まとめ

ゆっくりと動くことの意味、そして、速い動作が技術的にも身体能力的にも精神的にもハードということを分かっていただけたでしょうか?身体能力・技術・精神力、どれかひとつで無理やりクリアしていれば、いずれそれまでの代償を支払うときがきます。そうならないためにも、ゆっくりから徐々にスピードを上げていき、3つの要素が追いつき、追い越しを繰り返せるように日々の練習を続けていきましょう。

どの様にできるか、どうやってできるようにするかを考えて、挑戦して、成功させるまでの過程がパルクールです。

〇〇という動きができた「だけ」ではパルクールとはいえません。日頃から「ゆっくり動けた方が良いよ」と伝えている背景には、パルクールの考え方に沿った理由があるわけです。パルクールの練習以外の場面でも、意識するとプラスになる部分があるので、保護者の方もこの考え方をぜひご活用ください。

パルクールの事を伝えようとすると、小難しい話になってしまうのですが、表面ではなく本質を伝えていきたいと考えています。運動教室でこれを説明したらそれだけで半分終わっちゃいそうなので、教室では大まかに、こちらでは細々と伝えるスタイルで続けていこうと思います。それでは!