この記事はこんな人におすすめ

パルクールについて色々知りたい
パルクールをこれから始めたい
自分にあった運動方法を探したい

1.思考力・想像力

思考力とはある課題・問題の本質を捉え、最適な解決手段を導くための力です。想像力とは、知識や経験をもとに頭の中でイメージを作ることで、問題解決の手がかりを生み出す能力です。どちらも情報処理の能力ですが、想像力できっかけを作り、思考力で具体的な問題解決を行うという順序で処理されることが多いかと思います。パルクールは自由度が高い反面、上達するためには適切な課題設定と達成を繰り返す必要があるトレーニングです。また、動きながらこの能力を発揮しなければならない場面も出てきます。今回は目標達成や課題設定の側面を中心に、思考力・想像力をどう使うのかを紹介したいと思います。

2.パルクールの考え方

前回のエントリーで紹介した危険への対策だけでなく、あらゆる場面で想像力と思考力を働かせることが大切です。パルクールには、歩く、走る、跳ぶ、回る、登るをはじめとして無数の動作が存在して、日々新しい動作が生み出されています。その動作の中には共通する要素を組み合わせた動作もあれば、全く違う要素を掛け合わせた動作もあります。無数に動作が増えていくのは、ひとりひとりが異なった目標・視点を持ち、それぞれ異なった環境で課題に向き合うという特殊性がひとつの要因と考えています。なので、些細な事にも疑問を持つ習慣を作るのが、パルクールの理解を深めることに役立つと思います。

2-1.クリティカルシンキング

例えばどんなことに疑問を持つのでしょうか?その例をいくつか挙げてみます。

・この場所からあの場所までどんな方法で移動できるか?どんなルートがあるのか?
・このジャンプは横に蹴った方が良いのか、下に蹴った方が良いか?そもそも身体能力は足りているのか?
・手を振り上げるときに肘の高さは目線まで引っ張るか?肩の高さでも良いのか?勢いはどの程度か?タイミングは?
・この一歩は指先から着地するか?母指球から?かかとから?ベタ足?足って前に伸ばすの?下に伸ばすの?
・真っすぐ立つときは足裏のどこに体重を乗せればよいのか?しゃがむときや立ち上がる時も同じか?歩いたり走ったりすると変わるのか?

疑問は抽象的ものから具体的なものまで、セオリーや自分が正しいと信じてきたものまで色々あると思いますが、どこまで正しくて、どこまで間違っているんでしょうか?パルクールを実践する上で大切なのは、あらゆることに対して1つ1つまで「前提を疑い、客観的かつ批判的な視点で観察して、その上でどこが合理的なのか、非合理的なのかを見極めて改善する」という作業を繰り返すことです。そして、この考え方に慣れたとしても、常にこの考え方ができていると思い込まないことも重要です。何故かというと、自分の思考の癖も含めて疑う姿勢がなくなってしまうと、「前提を疑う」ことから始めるという前提が崩壊してしまい、問題の本質を捉えられなくなってしまうからです。パルクールでは動作を改善させるときにこの思考法をよく使いますが、こういう考え方をクリティカルシンキングと呼んだりします。

2-2.アクティブラーニング

パルクールを実践する場合、主体的であることが求められます。主体的に取り組むというのは、決まった距離をただ跳ぶ、決まった動作をただできるようにするということではありません。1つ1つの動作を「こうしたい」という自分の価値観に従って、自分のための挑戦を積極的に行うのが主体的な姿勢です。例えば、動きの印象ひとつでも「軽やか、力強い、美しい、洗練された…etc」に加えて、それぞれの要素がどれくらい混ざっているのか?まで考えれば、人によって目指すものは全く異なります。しかし、好きだから、楽しいから、達成感を得たいからのような内側から湧く動機(内発的モチベーション)にもとづいて取り組むので、挑戦して・経験を積んで・自ら考え・情報を集め・学習を繰り返すということを納得できるまで続けられるわけです。このように、パルクールでは課題設定を能動的・積極的に行う機会が多いため、1つ1つの行動や思考がアクティブラーニングの特性に近づいていく傾向にあります。

2-3.PDRサイクルとPDCAサイクル

ある目標をクリアしようとするとき、「どんな準備をすれば良いか?どう行動すれば良いか?結果はどうだったか?そもそも前提は間違っていなかったか?」のような思考と実践を繰り返していきます。これをあらゆる状況で行うとともに、自分で影響を及ぼせる範囲と、そうでない範囲を明確にして、自らの課題に取り組みます。このように、パルクールでは身体的活動と並行して、知的活動による準備と評価を繰り返すことで、目標達成や成長に必要な改善を高頻度で意識的に行っていきます。
これはPDRサイクルと呼ばれるもので、Prep(準備)・Do(実行)・Revew(評価)の頭文字を取ったものです。「最低限の準備をしたら、とりあえずやってみて、結果どうだったか考えて次の行動に繋げる」という一連の流れを、短いサイクルで繰り返すため柔軟な対応が可能になります。Revew→Prepで改善策を織り込んでしまい、小さな改善の更新頻度を上げることで効果を積み上げるイメージです。特に練習中は長々と計画を立てる時間はないので、普段はこちらの考え方がメインになります。必要なら前提が変わってしまうことも許容できるので、クリティカルシンキングの考え方を使いやすいのもメリットです。
一方で、PDCAサイクルという考え方もあり、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Act(改善)の頭文字を取ったものです。「綿密に計画を立て、計画通りに実行して、結果どうだったかを評価する、改善策を講じて計画の達成・再構築を行う」という流れになり、計画を順守する事、その効果を確認する事に重点を置いた考え方です。どちらかと言えば、進捗を管理しつつ長期的な目標を達成するのに向いた考え方です。例えば、「コンクリートで宙返りをできるようする」という大目標に対して、「いつまでに、どんな能力を、どんな方法で、どのように身につけるのか」という小目標を立てて計画的に達成する場合に向いている方法です。こちらは前提(計画)が変わってしまうと大改修が必要になる可能性があるので、変える必要がない目標を設定しましょう。
PDRの方が行動の早さ・回転率の高さ・柔軟性の高さに秀でているので運用の幅が広く、PDCAは今挑戦できない・実現に時間がかかる問題に対して効果を発揮しやすいとお考え下さい。

3.パルクールという知的な運動

今回は思考力と想像力に関する要素について紹介してみましたが、パルクールのイメージに変化はありましたか?一見すると、野蛮で無謀なアドレナリンジャンキーのように見えますが、本質的な部分を実践するにはかなり頭を使います。イギリスでは公的な教育にも取り入れられていて、パルクールをやっていると言えば「パルクールやってるんだ?君は頭が良いんだね。」なんて言われるそうで、面白い認識だなぁと思います。日本ではパルクールそのものの社会的な認知度が低く、本質に至ってはほぼ認知されていないのが現状ですが、少しずつでも認識が変わるように、今後も本質的な部分を伝えていこうと思います。

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